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忘却と慣れ [思った事]

人には忘れると言う習性と慣れるという習性があります。

いずれも時間の経過と密接な関係がありますが、この両者の機能は人間の脳が自分自身を
守るために本質的に備わっているものだと思います。
そうでないと辛かったり、苦しかったりした記憶や現状に常に支配され、
過度のストレスにより心身に異常をきたすからです。
またその逆に楽しかったり、うれしかったりした記憶は長くとどめる機能もあります。
これも生体防御機能の一つです。
つまり自分にとって都合の悪いことは忘れやすく、都合のいいことはずっと覚えていると言うことに
なります。

この機能は心身の維持には大切な役目ですが、こと投資に関してはマイナスの面があります。
損をした体験は忘れやすく(都合が悪いため)儲けた経験はずっと覚えている(うれしい記憶)ため、
過去の経験が生かせず、同じ失敗を繰り返す可能性があるからです。
さらに資金追加した場合、記録に残していないとどんぶり勘定になってしまう可能性もあります。
十分に注意しなければなりません。
ここまでが忘れると言うことに関してです。

さて人は同じことをいつまでも続けていると退屈し、やがて感覚が麻痺してきます。
このマンネリに陥った状態が(悪い意味での)慣れです。

投資の場合、いつも同じ事、同じ銘柄、同じ金額を扱っていると刺激がなくなります。
優れた投資方法を実践していれば、何も感じなくなるのは最高の状態といえるのですが、
そう簡単に事は運びません。
より大きな利益をもとめて、投資金額が大きくなったり、レバレッジを大きくしたりすることになります。
それが自分のメンタルや資金量に応じたものならばいいのですが、
それを超えた場合、予測不能の事態に耐えられなくなります。
大損、退場の一番大きな原因です。

さて、上記は自分自身だけで完結する忘却や慣れの話でしたが、そうでない場合もあります。

今度はもう少し広い意味で考えてみたいと思います。
相場の世界ではバブルが発生し、それが破裂すると言う歴史が繰り返されています。

ここでバブルとは何かを定義づけなければいけません。
バブルとは、業績の伸びを無視した株価の膨張と言うことになります。
例えば業績が2倍ならば株価は2倍になるのは当然です(あくまでも理論上)
また相場は先読みゲームなので将来の成長を見越してある程度のオーバーシュートは
あるでしょう。

しかし、5年10年先ともなれば予想すること自体が無理でしょう。
もちろん予想はしない(するものではない)と言う意見の方もおられますが、
1~2年先の業績は予想することを前提に投資が行われている場合が多いので、
多数の意見で考えることにします。
こうしてみると過去の経験則でしかありませんが、PER15倍~20倍程度が平均的水準と
言うことになります。
成長性を加味してもPER30倍程度が限度に思えます。
これ以上はバブルと断言できないまでも、業績を基準にした場合では正常値ではないと
言えるでしょう。

前置きが長くなりましたが、一定の基準があってもバブル発生、その崩壊があるのは、
業績以外の基準を持つ人の存在(日本では多数派)が大きいのはいうまでもありませんが、
過去の出来事を忘れているからです。
つまり過去から学ばないからではないでしょうか。
もちろん過去など知らない、過去から学ばない、過去など未来に関係ない、儲けたものが正義
などと言う考え方がありますが、その考え方で短期間(3年程度まで)利益を出された人は
多くいますが、20年、30年の長期にわたり利益を出された人はあまり知りません。

くしくも上記の3年というのは相場格言の大回り3年、ならびに投資家の平均口座維持期間
3年説と重なるのは単なる偶然でしょうか?

最後に慣れを他者に利用された場合について考えてみたいと思います。

自分の力が及ばない場合、最終的にはあきらめる人がほとんどですが、最初のうちは何らかの
不平不満を口にしたり、何らかの行動を起こす人(署名活動、請願、陳情など)もいるでしょう。
法整備されたり、長い間の慣習になるとそれに順応しようとする人がほとんどでしょう。
ストレスから開放されるために多くの人がそうしています。

さて多くの人を従順させるには時間をかけて少しずつ変化を行い、最終的にはさもそれが
当然であるような状態を作り出すことが肝要です。
人は劇的な変化には拒否反応を示しますが、少しずつの変化には気がつきにくく、
気がついたときにはこんなはずではなかったのにと言う状態に追い込まれています。
いつか例として取り上げたゆでられるかえるの話でも、
いきなり熱湯に入れると飛び出す(拒否反応)が、水に入れ沸かしていくとゆで終わるまで
気がつかない(死んでしまう)と言う話を取り上げました。

現在の超低金利はまさにこの方法によってもたらされました。
最初は緊急避難措置という日本経済をすくためには仕方がない手段とのふれこみで
実施されました。
しかし景気が回復し、戦後最長の景気拡大といわれるようになっても
金利は低く据え置かれたままです。
超低金利に慣らされてしまったのです。
もちろん超低金利が望ましいと思われる人たちの思惑があったことも大きな要因ですが、
やはり景気と金利の関係に鈍感な国民性を利用されたことは間違いないでしょう。
今になって政策担当者はジレンマを抱えているようですが、手遅れの間は否めず、
身動きが取れなくなってしまっています。

また低金利が恒常化し、すっかりそれに慣らされた上に過去のことは忘れ去られ、
また過去の事を知らない人々が増えてきたことにより、超低金利が自然な姿として定着しました。
最近20代の男女と話をした際に定期預金の金利が5%以上あったという過去の歴史を知らないと
言う人が多いことに驚きを感じました。
低金利の続いた時間がそれほど長いと言うことであり、
まんまと国の都合のいい状態(国債の金利負担が少ない)に誘導完了されたのです。
また、デフレを知っていてもインフレを知らない世代が増えつつあることを改めて実感できました。

このことは低金利終了リスク、インフレリスクが通常より高まったことを意味します。



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